【化学ってこんなお話】原子の気持ちがわかります(最外殻電子の話)

化学 受験

この「化学ってこんなお話」のコンセプト

教科書、参考書、問題集、それらが悪いというわけではないけど、なんか楽しくないですよね。そこには載っていないお話ができればいいかなと思っています。高校の『化学基礎・化学』の勉強を始める前に、知っておけば化学に親しみが湧き楽しくなるお話をしていきます。

前回のお話で原子の構造がおよそイメージできたかなって思います。

前回までのお話
118種類の原子たちの構造は
陽子と電子を1個ずつ持つ 水素H
陽子と電子を2個ずつ持つ ヘリウムHe
陽子と電子を3個ずつ持つ リチウムLi
陽子と電子を4個ずつ持つ ベリリウムBe
・・・
となっている。

◇化学ってこんなお話◇
最外殻の電子たちから原子の気持ちがわかります

今回は、この原子たちが持っている電子はどうなっているかを見ていきます。今後の化学の話に結構必要なイメージなので、理解してもらえるように全力でがんばりますよ!

まずは原子たちの表面に着目していきますね。

原子の表面はどうなっているの?

1粒の原子のことが分かると、次はその原子たちがどんなふうに引っ付いて大きな塊(モノ)になっているのかが気になります。引っ付くということは、やっぱり表面の様子が大切なわけです。表面がザラザラなのか、ツルツルなのか、それともベタベタなのかで引っ付き方が違ってきそうですよね。

前回のお話で、原子の表面には電子が飛び回っていることが分かったと思います。なので、この電子たちに着目しないといけません。

電子は電子殻と言われる場所にいる

実は、電子は原子核の周りを自由に飛び回っているのではなく、電子殻という決まったエリアしか飛べなくなっています。しかも、電子殻の中でさえも自由は得られず、厳格に飛べるコースが決められていて、原子核に近いコースから順に、K殻L殻M殻N殻というふうな名前が付けられています。

アルファベットのKから始まるのってなんか変な感じですが、これはK殻の内側にまだ見ぬコースがあったら困るからという先人の配慮なんですね。ただ、悲しいかな、無駄骨だったという結果になっていて、内側にはコースはないようです。

同じことは電車のプラットホームの番号(〇番線のホーム)でもありますね。1番線がなくて2番線から始まっている駅がたまにあります。油断すると話が脱線してしまいますね。(うまい!?)

え~と、話を戻しますと…、電子はあるルールに従って電子殻(K殻、L殻、…)を飛び回っていて、その飛び回っている様子を表したものを電子配置といいます。言い方をかえてみると、電子を配置するときにルールがあるといった感じです。

電子配置のルール

  1. 各殻は飛べる電子の数に制限がある
    K殻2個、L殻8個、M殻18個、…
  2. 電子はできるだけ内側の電子殻を飛びたい
  3. 各殻は電子で満タンになると閉殻する

このルールを踏まえると、電子は次のような感じで電子殻に入っていることになります。ちょっと動画が分かりやすいかなと思ったので作ってみました。原子番号1~20までの20個は特に重要なので、そこまでの絵になっています!

原子番号順に列挙しておくと
*K(2)はK殻2個、K(2), L(3)はK殻2個, L殻3個という意味です。
また、元素記号の左下の数字が原子番号で、電子数を意味しています。

1H 水素 K(1)
2He ヘリウム K(2)
3Li リチウム K(2), L(1)
4Be ベリリウム K(2), L(2)
5B ホウ素 K(2), L(3)
6C 炭素 K(2), L(4)
7N ちっ素 K(2), L(5)
8O 酸素 K(2), L(6)
9F フッ素 K(2), L(7)
10Ne ネオン K(2), L(8)
11Na ナトリウム K(2), L(8), M(1)
12Mg マグネシウム K(2), L(8), M(2)
13Al アルミニウム K(2), L(8), M(3)
14Si ケイ素 K(2), L(8), M(4)
15P リン K(2), L(8), M(5)
16S 硫黄(いおう) K(2), L(8), M(6)
17Cl 塩素 K(2), L(8), M(7)
18Ar アルゴン K(2), L(8), M(8)
19K カリウム K(2), L(8), M(8), N(1)
20Ca カルシウム K(2), L(8), M(8), N(2)

そのうち、この20個は順番も含めて覚えないといけませんが、今はまだ大丈夫!では、各ルールを確認していきましょう。

各殻は飛べる電子の数に制限がある

電子はすべてマイナスの電気を持っている粒子(荷電粒子と呼ばれています)なので、お互いは反発してしまいます。なので、あまり近づくことはできないようで、そのため各殻は「これ以上は無理」という人数制限のようなものがあります。外側になるほど広いので電子がたくさん入れるようですね。

電子はできるだけ内側の電子殻を飛びたい

電子にも「こころ」なるものがあります。電子はお互い反発し合っていて中は良くないんですが、陽子とは仲が良くてちょっとでも近づきたいんですね。まぁ、理由は陽子はプラスの電気を持つ粒子なので、お互いがひきつけ合っているわけなのです。

ですので、電子はできるだけ内側の電子殻を飛びたいということになります。K殻が空いているならK殻を。K殻がいっぱいならL殻を!といった感じです。

ただ、ちょっと難しい話になるので説明は割愛しますが、大切なお話です。M殻は最大で18個だと説明しました。これは正しいのですが、原子番号19のカリウムKの電子配置を見てみると、K殻2個、L殻8個、M殻8個、N殻1個とルール違反をしています。本当はカリウムKくんは善人なのですが、ここではちょっとルールを破った悪い子としておきます。同じように原子番号20のカルシウムCaくんもカリウムKくんのお友達でいたずらっ子なのです。

  • 原子番号19 カリウム K
     K殻2個、L殻8個、M殻8個、N殻1個
  • 原子番号20 カルシウム Ca
     K殻2個、L殻8個、M殻8個、N殻2個

*この2人はルール違反者で指名手配中です!

各殻は電子で満タンになると閉殻する

ここ重要です!!!(突然!でもマジです!!)

各殻はもう電子が入るスペースがなくなってしまうと、殻を閉じてしまいます。入ってこようとする電子を締め出しちゃうわけですね。これを閉殻すると言っています。電子は内側の殻から入っていこうとするので、内側から順番に閉殻していくことになります。

また、電子が各殻に入っていっているとき、電子が入っている一番外側の殻を最外殻電子殻といい、そこに入っている電子を最外殻電子といっています。この最外殻に入っている電子は、原子の一番外側になっているので、最初のお話でした原子の表面にすごく関係しています。

  • 原子の最外殻電子が、原子同士の結びつきに関係している

というわけなのです。ある意味、この最外殻電子をイメージできるようになるために、いままでずっとお話をしてきたといっても過言ではありません!

原子の「こころ」とは(原子の気持ちを考えよう)

そして、知っておいてほしいことが続きますが、最外殻電子が満タンになって閉殻している時としていない時で原子のこころがまるで違ってきます。

  • 最外殻が閉殻しているとき、原子はとても居心地が良い状態

逆に言うと、

  • 最外殻が閉殻をしていないとき、原子はあまり居心地が良くなく、ずっとイライラしている状態

あまりにも大切すぎるので、絵にしてみました。


ほんとにこんな感じです!特に酸素Oくんは機嫌が悪いんですね。一応、20個の原子たちを整理しておくと

  • 2Heヘリウム、10Neネオン、18Arアルゴン
     落ち着いて、こころは安定。
  • それ以外の原子たち
     落ち着かず、こころはイライラ

ということなのです。

原子も人間も同じで、気持ちがわかると親しみが持てますよね。少しでも原子に親しみが持てたら、化学を理解するのが圧倒的に楽になります!

次回予告

すいません!次回こそは「周期表」についてです!
おたのしみに~

≪4話 原子核からわかること
≫5話 周期表からわかること