【勉強が苦手】丸がもらえてOKにしないで/答え当てゲームは禁止!

勉強法 教育

足掛け20年ほど個別指導という形で多くの子どもたちを見てきました。

個別指導なので、各子どもに合わせて指導をしていきます。そのため、子どもの性格やそのときの状況によって、かける言葉や指導内容は異なっていきます。

けれども、どの子どもにも共通して似たような話や説明をしているということもあります。

今回はその中の一つ、勉強を少し苦手としている子どもを指導しているときに、よくしている声掛け「丸がもらえてOKにしないで」というものです。

「答え当てゲーム」は禁止ですよ

まずは具体的な事例をいくつか挙げてみます。

例1
生徒が選択肢の問題を解いていて
生徒「答えは『ウ』ですか」
先生「ちがいます」
生徒「じゃあ…、『ア』かな?」
先生「『ア』もちがいます!」
生徒「なら『イ』!」
先生「正解です」
例2
先生が宿題の丸付けをしているときに
先生「この式 120×0.6=72はまちがいだよ」
生徒「じゃあ、120÷0.6?」
先生「そうですね」
例3
生徒が問題を解いているときに
生徒「先生、これは掛けるのですか、それとも割るのですか?」
先生「これは『道のり÷時間=速さ』だから1200÷20=60 m/分ですよ」
生徒「なるほど」
例4
生徒がテストを受けている
生徒の心の中(え~っと、これは掛けるんだったかな。割るんだったかな。なんか先生は掛けるって言ってたような気がするけど…)

この先生と生徒のやり取り(もしくは生徒の心の中)、みなさんはどう思われるでしょうか。

これらの例は、いずれも「答えが出て、丸をもらえたらOK」という刹那主義的な、そのときにオッケーマークの〇がもらえたら問題なしというわけです。

つまり、子どもは「答え」が合いさえすれば良しと思っており、それが勉強だと捉えています。雰囲気的には「答え当てゲーム」といった感じです。

子どもの「じゃあ、〇〇かな?」というような言葉はまさに「答え当て」をしているという様子です。「掛けるの?割るの?」という質問も、「1200×20=24000と1200÷20=60、どっちかな?」ということを言っているようなもので、「勉強をしている」とは言い難い状況です。

「先生の心の中にある正解の数字はなんだろう」という感じで、先生の顔色をうかがう子もいます。先生の顔を見ながら「『エ』かな。ん~、でも先生のその顔だと違うっぽいなぁ」っていう子もたまにいるくらいです!

本人の中では

信じられない人がいるかもしれませんが、当の本人には一切悪気はありません。いままでそれではいけないことを指摘されたことがなく、「勉強はそういうものだ」と思っています。

つまり、本人にとっては「真面目に勉強しています」ということなのです。

事実、授業ではこの「答え当てゲーム」をやめさせていくのですが、頑なに抵抗されることはありません。子どもによって程度の差はありますが、指導していくことで少しずつ正しい勉強の仕方が身についていき、改善していきます。

指導の仕方(改善方法)

このような状況の子どもに指導する場合、かなり手取り足取りサポートしていく必要はあります。

方法としては、可能な限りスモールステップにして、一つ一つ具体的な例を挙げて理解に努めていけるようにします。

たとえば、さきほどの「掛けるか割るか」問題の解決を試みてみましょう。

手順は次のとおりです。

  1. 3+3+3+3+3+3+3の計算をする
  2. 3を7個集めると3×7になることを理解する
  3. 20個を4つずつに分けると20÷4=5個になることを理解する
  4. 20個の中に4個がいくつあるのかも20÷4=5だということを理解する

ここで大切にしたいのは「掛け算イメージ」「割り算のイメージ」です。大雑把ですが、「掛けたら増える」「割ったら減る」といったイメージも持つように促します。(1より小さい数だと話は変になりますが、この時点でそんな話はしません)

「掛け算ってこんな計算」「割り算ってこんな計算」ということが少しわかった状態で、元の問題に戻ります。

きちんと問題文の状況を把握した上で、掛けるべきなのか、割るべきなのかを改めて考えてもらいます。このときも「答え当てゲーム」にならないように次のように声掛けをします。

  1. 「掛け算」か「割り算」を選んだら正誤に関係なく、なぜそちらを選んだのかを聞きます
  2. 正解を選んだ場合、選んだ理由が正しければOK
  3. 正解を選んでも理由が間違っている、もしくは正解を選べなかった場合、理由を聞くことで理解していないことが分かるので、その内容に応じて問題文の状況をより分かりやすく絵にしたり説明したりして、再度考えてもらう

そもそも、勉強を苦手としている子どもは、「考えられない」ではなく「考えていないだけ」ということが目立ちます。「考える」ように促すと、少しずつ考えられるようになっていきます。

ただ、「考えなさい!」では何も解決しないので、考える手順を細分化してスモールステップにした上で、一つずつ具体的に理解し考えていくというプロセスを経て、考えるということを身につけていきます。

まとめ

勉強は、ついついテストの点数や成績表といった数値化された結果に目を向けてしまいます。

けれども本来の勉強は、「答えが合っているかどうか」ではなく、「答えに至るプロセス」を学びの対象としています。

子どもの勉強、テスト、成績表などを見るときには、数値に惑わされず答えに至るまでのプロセスを気にしてもらえたらと思います。