なぜ、夢や目標は達成するのが難しいの?

成功

「将来、こうなっていたい」という夢はみなさんにもあるでしょう。

大きな夢でなくても、「夏までに痩せたい」「1年後にはこうなっていたい」「〇〇大学に合格したい」といった目標でもよいです。

多くの人は夢や目標を持っており、それを叶えたい、達成したいと思っています。けれども、現実はなかなか上手くいかないものです。

でも、なぜ上手くいかないのでしょうか。

努力が足りない?

自制心が足りない?

夢や目標が大きすぎる?

上手くいかなかった理由を挙げると、いろいろとありそうです。けれども、本当の理由は意外と違ったところにあるのかもしれません。

今回は、目標を達成できない理由を行動心理学を用いて考えてみます。

不合理な行動をしてしまう

私たちは、常に自分の意志で自身の行動を選択していると思っています。けれども、実際には心理的にさまざまなバイアスがかかってしまい、自分の思いとは異なる行動を選択してしまっていることがあります。

場合によっては、よく考えると不合理な行動だと思われる選択を結果的にしていることさえあります。

冷静に考えるとAという行動をするべきなのに、さまざまな心理的なバイアスがかかってしまい、結果Aとは異なるBという行動をとってしまうのです。

理屈では
行動Aが正しいと考えられる
実際には
行動Bをとってしまう

これはなかなか厄介なものです。理屈でどれだけ行動Aが正しいと考えることができても、行動Bをしてしまうわけです。

行動心理学的には、このようなことが起こる原因となるものをバイアス(偏見)と呼んでいます。バイアスは頭の良さとか関係なしに、基本的には誰でも行動選択に影響を受けてしまうものになります。

そして、今回お話するのは、バイアスの中の一つ「遅延割引」という未来の価値を割り引いてしまうバイアスについてです。

遅延割引① 報酬の価値の割引

「遅延割引」にはいくつかの作用があるのですが、今回はその中にある2つの作用についてお話します。

まず1つ目の作用は、未来の報酬の価値を割り引いてしまうというものです。

遅延割引①
未来の報酬の価値を割り引いてしまう

例えば、次のような選択肢があるとします。あなたならどちらを選びますか。

  1. 「今、2000円を貰う」
  2. 「1か月後に3000円を貰う」

実験では、大抵の人が「今、2000円を貰う」を選ぶようです。

この現象を理屈で考えると、「1か月後の3000円」は、「今の2000円」より価値が低いということになります。つまり、未来の報酬の価値が下がってしまっているというわけです。

未来の目標

これを未来の目標に置き換えて考えてみます。たとえば、今が冬だとして、「夏までに痩せたい」というダイエット目標があるとしましょう。

このとき、次の2つの価値を評価することになります。

  1. 「今、お菓子を食べる」
  2. 「夏には痩せている」

理屈で考えたら「痩せたい」わけですから2つの価値を比べると

「今、お菓子を食べる」「夏には痩せている」

となっているはずです。先ほどの話でいうと「2000円<3000円」というわけです。

けれども実際には「遅延割引」のバイアスがかかってきます。未来の報酬「夏には痩せている」の価値は割り引いて評価されてしまうのです。その結果、2つの価値は逆転しまい

「今、お菓子を食べる」「夏には痩せている」

となってしまうわけです。悲しいかな、ダイエット目標は失敗に終わってしまうのです。

遅延割引② 痛みの割引

遅延割引のもう1つの作用は、未来の痛みを割り引いてしまうというものです。

遅延割引②
未来の痛みを割り引いてしまう

私もそうですが、多くの人がやりたくない作業を先延ばしにしてしまいます。

理由は、今その作業をやることを思い浮かべると、具体的にその作業をイメージできてしまい痛みを感じやすい反面、未来にやることにすると、具体性が薄まり今よりもラクにできそうだと思ってしまうためです。

「今作業をする」痛み 「未来に作業をする」痛み

このため、「やりたくない作業」を先延ばしにしてしまうのです。未来にすることにするとラクだと感じるので、先延ばしを正当化してしまうことさえあります。

遅延割引のせいで達成できない

頭の中では(つまり理屈では)、達成したときに得られる報酬は痛みに耐えてでも得たいものであり、是が非でも勝ち取りたいと考えています。そうでなければそもそもその目標を持たないでしょう。

頭の中(理屈)では
「目標に至るために伴う痛み」「目標を達成したときの報酬」

であるにもかかわらず、その目標を未来に据えてしまうと達成したときに得られる価値が割り引かれてしまい、結果的に痛みに打ち勝てなくなってしまうわけです。

目標を未来に据え置くと
「目標に至るために伴う痛み」「目標を達成したときの報酬」

こうなると、痛みを伴うことを選択して行動することが困難になります。

そして、さらに追い打ちをかけるように、未来にすることにするとその行動から受ける痛みが和らぐように感じるため、結果「今はまだしなくても…」という気持ちが芽生えてしまうわけです。

遅延割引というバイアスが心の中に生じさせるダブルパンチ、未来に対しての「報酬の価値の割引」「痛みの割引」によって目標達成が阻まれてしまうのです。

遅延割引への対抗手段

目標達成が失敗する理由が分かったわけですが、ではこの問題点はどう解決したらいいのでしょうか。

答えは、未来の目標(または夢)を具体化するということです。

未来の価値が割り引かれてしまう大きな要因は、私たちが未来のことになればなるほど具体的に考えることを放棄してしまうという点にあります。

具体的にイメージしないために価値がぼやけてしまい、本来の価値より低下してしまうということなのです。

ですので、解決するためにはより具体的なイメージを持つことです。

例えば、単に「〇〇大学合格!」ではなく、次のようにしてみます。

  • 一人暮らしして、部屋はこういう感じにしよう。
  • 合格したらアルバイトをして、こんな自転車を買って通学しよう。
  • 大学生になったらこんな髪型にして、興味がある軽音部に入ろう。

未来をより具体的なものとして実感すると、未来に得られる価値を割り引かなくなる効果があります。

達成したい目標は、可能な限り具体的に想像する

これは、目標を達成するためにはとても大切なことなのです。

まとめ

今回は、夢や目標を叶えようとするときに障壁となっているものを、行動心理学的な視点で捉えて、解決していく方法についてお話してみました。

達成したい目標を可能な限り具体的にイメージするようにしてみてください。場合によっては体験してみたり、実際にその場に行ってみるのも方法の一つです。

これが「夢が叶った」「目標が達成できた」というキッカケになれば幸いです。