【算数・数学】思考力を養うために計算力を鍛えよう

教育 数学

最近流行りの「思考力」、話題の中にはあまり登場しませんが、算数・数学で思考するためには「計算力」というのはとても大切なものです。

1月に「共通テスト」が実施されました。センター試験からの変更点は「思考力を問う問題」の出題です。以前からも「思考力」というものは取り沙汰されていましたが、今回大きく異なるのは実際に大学の入学試験の中に組み込まれたことです。

ただ、この変更は大学入試に限ったものではありません。大学入試が変わると、中学入試や高校入試も変わることになります。

学校が大学受験の合格実績を求めるならば成果を出せる生徒が欲しいわけで、中学や高校が受験でそういう生徒を選抜しようとするのはごく自然なことです。このため、子どもはもちろん、子育てしている親にとって「思考力」というものを無視できないものになってきています。

今回は「算数・数学における思考に計算力は欠かせない」というお話をしたいと思います。

 
先生「思考力を思う存分発揮するためには、控えめに言っても計算力は必要不可欠です」

この記事の内容

1.「計算力」とは

「計算力」といってもきちんとした定義はなく、人によってイメージの異なる曖昧な表現です。まずはここでの意味を定めておきます。

計算力とは
学校で学習する基本的な計算を、正しい方法でスムーズに行い答えを求めることができる力

「学校で学習する基本的な計算」とは、小学生ならば学校で習う四則の計算や、小数・分数の計算を意味しています。いわゆる入試問題で出題されるような小難しい計算のことではありません。

また、「スムーズに」というのは滞ることなく計算できるということで、計算のスピードを求めてはいません。

「スムーズに」とは

早速「思考」についてのお話をしたいのですが、ちょっと誤解があると困るので「スムーズに」の意味合いをまずはきちんとお伝えしておきます。

間違って欲しくないのは「スムーズに」というのは計算スピードを求めているのではないということです。「スムーズに計算をする」と「速く計算をする」との違いは、簡単に言えば、「鉛筆の動き」です。

  • スムーズに計算をする
    = 鉛筆の動きを止めない
  • 速く計算をする
    = 鉛筆の動きを速く

基本的な計算で鉛筆の動きが止まっている瞬間は、何らかの頭の動きが入っています。「この計算、どうやるんだっけ?」とか単純に「えぇ~っと…」みたいに悩んでいる感じです。

この間(ま)を無くして淡々と計算して欲しいというのが「スムーズに計算をする」の意味合いです。悩むことなく、つまり鉛筆を止めることなく計算できるようにということです。

計算しているときの動き、つまり鉛筆の動きを速くして欲しいわけでありません。これは後でお話しますが、百害あって一利なしですから。

2.スムーズに計算ができると

スムーズに計算できることは、思考する上で欠かせない能力になります。

これは指導している中で強く感じることですが、単純な処理として行わなければいけない計算に思考の大部分を占められてしまうと、思考ができなくなってしまいます。別の言い方をすれば、今まで思考していたものを一旦頭の中から消し去らないと、計算のために必要な思考部分を割けないというわけです。

きちんと反復演習をして手を止めることなく計算できるようにしておけば、計算処理に脳の思考部分を使う必要はほとんどありません。けれども、少しでも計算に手間取ると、脳が思考し始めてしまい、それと同時にその前に思考していたことを脳に捨てられてしまうことになります

そして悲しいことですが、計算に思考を奪われた場合、計算を終えても先程の思考状態に戻してはもらえません。なぜなら、脳には思考を保存しておく機能がないからですね。

このような事実を知ると、悩むことなくスムーズに計算できる力は思考力を養う上では必要な能力だと言えます。思考を邪魔されないために絶対なくてはならないというわけです。

3.計算スピードは気にしません

計算をスムーズに行えるようになると、手が止まることがないので、結果的に計算に要する時間が短縮されます。けれども、これはあくまで本来の目的ではなく、結果そうなるだけです。

誤解して欲しくないのは、計算をスムーズに行えるようにするというのは計算スピード自体を求めているわけではないということです。

間違っても「計算をもっと速くするように!」と指導してはいけません。このような声掛けをすると鉛筆の動きを速くさせてしまいますが、これは良くありません。鉛筆の動きを速くするデメリットは3つほどあります。

鉛筆の動きを速くするデメリット

  • ケアレスミスが増える
  • 字が雑になる
  • ノートが計算用紙のようになる

ひと言でいうと、勉強が雑になります。つまり「鉛筆の動きを速くしなさい」というのは「雑にしなさい」と指導しているのと同じなのです。これは算数・数学を学習する上で致命的な問題点となります。ひどい場合は他の教科にも雑さが及んでいくこともあるので、絶対にしてはいけない指導・演習です!

4.受験レベルの計算問題

受験で問われるような小難しい計算は、「スムーズに」というよりは「ミスなく慎重に」を優先するように演習します。

多くの大手進学塾が、受験レベルの計算問題を短時間で解く練習をしていますが、控えめに言っても、このような練習は害悪です。なぜなら、計算練習で大切にすべきことは一にも二にも「正確さ」だからです。正確さを無視してスピードを求めても勉強が雑になるだけです。雑さを固める練習は絶対にすべきではありません。

解ける問題を確実に解く

塾によっては「入試では最初の計算問題を素早く解いて、後ろの難しい問題に時間を割り当てる」といった指導をすることもありますが、これも完全に間違いなのです。入試は「制限時間内にすべての解答欄を埋める」という作業ではなく、「解ける問題を確実に解く」ことが大切になります。

入試のときだけ「慎重に計算する」ということはできません。普段から入試レベルの計算問題は「ゆっくり、ていねいに、慎重に」といった声掛けをするのが最も良いです。

まとめ

以上、計算する能力について、整理をしてみました。

指導している中で痛切に感じることは、もっと反復演習をして計算をスムーズにできるようにしないと問題を考えることはできないよということです。そういう意味で、控えめにいっても計算力は絶対に必要なのです。

基本的な計算は、滞りなくスムーズに行えること。小難しい計算は急がず丁寧に解けること。これがとても大切なのです。