【英語不信を解決】英語を「箱」で考えてみる(語順を気にしてもらうために)
学習塾で指導をしていて、英語の苦戦は本当によく見受けます。僕も中高生のときには英語に苦戦をし、6年間ほぼ変化なく偏差値30台でした。けれども、苦戦した僕が言うのも変かもしれませんが、正直いって英語はそこまで難しくありません。
ここで紹介する方法を用いて、1年ほどで英語の偏差値30台後半から60台になった生徒もいますが、英語を指導する上で最も大切なことは「英語って難しくないよね」と思ってもらうことです。
それを感じてもらえる一つの方法を紹介します。
この記事の内容
1. なぜ英語は難しいと感じるの
英語を難しくしている原因はいくつか考えられますが、大きなものとしては次の3つが挙げられると思います
- 日本語と英語が違いすぎる
- 英語には例外が多すぎる
- 日本に住んでいて英語の必要性を感じない
この中で、2つ目と3つ目は精神的な問題かなと思います。これについてはちょっと置いておくとして、1つ目の「日本語と英語の違い」について考えてみます。
日本語はちょっと変
「日本人は英語ができない」とよく聞きますが、これは日本人の能力が低いとか、英語教育が悪いとか、そういうものが原因ではありません。単純に日本語と英語が違いすぎるだけです。
ただ、日本人からすると英語には馴染みがなく変に思えますが、世界的には日本語がかなり風変りでマニアックな言語になっています。事実、海外では日本語は習得するのが激ムズな言語の一つとされています。
日本語に「語順」という概念はない
では、日本語はどういう点で異なっているのでしょうか。結論から言うと、大きな違いは語順だと思います。多くの生徒たちに英語を教えてきましたが、英語を習得しようとする上でみんなが苦戦しているのは、日本語と語順が違いすぎるという点です。
ただ、よく考えてみると、そもそも日本語には「語順」という概念が全くないように思えます。例えば、次の、文節で切った文を見てみます。読みやすそうな語順で一応は並べてみましたが、述語の「しました」以外は自由に並べ替えることができます。つまり、正しい語順というのはありません。
生まれながらにして日本語に慣れ親しんでいる日本人にとっては、「語順」というのは全く気にならないものなのです。ところが、英語はこの点が違います。上記の文を英語にすると次のようになります。
英語では、この語順以外は許しません。特に学校英語では、これ以外の語順はバツです。
教える側と教わる側の見えない溝
長年英語に触れていると、語順のイメージを無意識で持つことになります。そして、その境地に達すると違和感なく、英語はそういうものだと認識しています。
ところが、英語を学習して間もない中高生にとっては、これが大きな壁になっています。語順に困っているというより、語順を気にしていないというのが正しいと感じます。これは語順を気にしない日本語を使用している日本人ならではの現象ではと思っています。
僕自身がこれを解決するために授業で常に意識させているのが、今回紹介する「箱で考える」です。
2. 英語を「箱」で考える

正直、これはそんな目新しい手法ではなく、ちょっとした表現の違いぐらいとも言えます。言ってしまえば従来の5文型と同じです。でも、経験から言うと、この指導方法はかなり上手くいきます。どうしてかというと、日本語でなじみのない語順を意識してもらえるようになるからです。
具体的には次のような感じで指導していきます。まず始めに意識してもらうのは、次の箱です。
- [ 主語 ] [ 動詞 ] [ 目的語 ] ( その他の副詞 ) ( 場所 ) ( 時 ).
先ほどの英文 “I played catch with my friend in a park yesterday.” をこの箱に当てはめてみます。

こんな感じで指導していきます。
例外は気にしたら負けです
英語を読むとき、英語を書くとき、常にこの箱の並びを意識してもらいます。もちろん、これに当てはまらない英文はたくさんありますが、気にしてはいけません。英語に例外はつきものですが、最初からそれを気にすると「英語はややこしくて分かりにくい」と思われてしまいます。そう思われたら負け確定です。
「英語はこう考えると、意外とシンプルですっきりしてるよね」という声掛けに頷いてもらわないといけません。英語をできるようにするために最初の第一歩はこれですから。
なぜか語順を変えたがる
英語を指導しているとよくあることなのですが、多くの生徒は新しい文法を習うたびに語順を壊していこうとします。英語不信といった感じからくる強迫みたいなものなのでしょうか。でも、実際にはほとんど語順は変わりません。
例えば、先ほどの文の否定文と疑問文を作ってみます。実は箱の並びは変わりません。

確かにbe動詞の文だとそういうわけにはいきませんが、be動詞はかなり例外であり、一般動詞の文と同時に習得しようとすればするほど、悪戦苦闘することになります。ある程度英語ができるようになるまでbe動詞は気にさせません。その方が圧倒的に「英語は難しくないな」と思ってもらいやすいです。
3.「箱」の並びは変わらない

本当にみんな「語順変えたい症候群」みたいな感じになるんですが、それを如何に治療するかが指導者の腕の見せ所です。
治療にはひたすら「箱」を意識して英語に取り組んでもらいますが、同時によくする声掛けは「箱の並びは変わらない」ということです。
例えば、中学3年間で学ぶ英文法をみてみます。
*4つ目と5つ目の箱「その他の副詞」「場所」は省略しています。
*意味合いが少し変なものもありますが、ご愛敬ということで。
[主語] | [動詞] | [目的語] | (時) | |
現在形 | I | use | a computer | every day. |
三単現 | He | uses | a computer | every day. |
現在進行形 | I | am using | a computer | now. |
canの文 | I | can use | a computer | every day. |
命令文 | Use | a computer | every day. | |
過去形 | I | used | a computer | yesterday. |
過去進行形 | I | was using | a computer | yesterday. |
未来形① | I | will use | a computer | tomorrow. |
未来形② | I | am going to use | a computer | tomorrow. |
不定詞 | to use | a computer | ||
動名詞 | using | a computer | ||
現在完了形 | I | have used | a computer | for two weeks. |
意外にも、箱の並びは変わりません。この話をすると、ほとんどの生徒は「あれ、こんなに単純な話なんだ」って思うようです。
中学では、これ以外にも大きな単元としては受動態、関係代名詞、分詞を学びます。少し複雑にはなりますが、基本的には次のルールが強く守られます。
否定文や疑問文もさきほど見た通り、全く箱の並びは変わりません。多くの生徒はこのことに気づいていないので、きちんと言語化して伝えていきます。
- 『動詞』から後ろはいじったらダメ。箱の並びは変わらないよ
- 『動詞』の後ろにはどんな箱が来るんだっけ
- 『目的語(~を)』の箱は動詞の真後ろに来ないと
- yesterdayっていつも文末にあるよね。『時』の箱は一番最後だよ
ひたすらこんな声掛けです。
4.「箱」の並びを決めるのは動詞
実は語順を決めているのは動詞です。これは英語を習得する上でわりと大切なイメージだと思っています。なので、生徒たちにそのことも伝えていきます。そして、それと同時に、「箱の並び」の種類を少しずつ増やしていってもらいます。
例えば、次のような感じです。
「言う」の動詞:say / tell / talk / speak

基本的な動詞なので、他にも多くの用法があるのは確かです。ただ、最初からそれを列挙してしまうと出来ることもできなくなります。各生徒の能力にもよりますが、スモールステップで進めていくのが最善手です。まずは動詞1つにつき箱の並び1つを覚えてもらいます。
このとき、間違っても自動詞と他動詞の話はしません。大学受験生ならともかく、英語に苦戦している生徒に「talkとspeakは自動詞、sayとtellは他動詞だから…」と説明しても、余計に分からなくしてしまうだけです。
まとめ
僕自身の英語の指導方法を、簡単にですが整理して紹介してみました。
英語の語順という概念は、英語ができる人にとっては当たり前だと思う内容かもしれません。でも、逆に英語に苦戦している人にとっては当たり前でなく、逆にそのために苦戦していると言えるものだと感じます。
例えば、英語ができている人にとって
は常識です。でも、苦手だと思っている人にとっては、「何それ」って感じです。それをただ「これを覚えれば英語はできるから」と言っても、英語をそもそもそのようなイメージで捉えていないので、覚えてもらうだけではなかなか上手くいきません。
でも、英語には箱があって、「箱の並び」を覚えて、箱に単語(もしくは句や節)を埋めていくんだというと、イメージがしやすくなるようで、すんなり受け入れてもらうことができます。
ちょっとした表現の違いなのかもしれませんが、おすすめなので是非お試しください。
*近々、実践編をご紹介したいと思います。