思考にノートは欠かせません【ノートは脳の記憶領域です】
「思考する」とか「考える」というと、ほとんどの方は「頭の中で」あれやこれやと考えることだと捉えています。
けれども結論から言うと、思考は紙の上で行うものです。
仮に違いがあるとすれば、算数・数学によって思考力を鍛えることに価値が見いだせなくなります。
この記事の内容
1.紙と鉛筆がないと思考は始められない
これは、実際にやってみるとわかることですが、「紙や鉛筆を使わずに難しいことを考えなさい」と言われると、どうしたらいいのか分からなくなります。
例えば、次のような問題を頭の中で考えてみてください。
問題:
はじめに太郎くんと花子さんはキャンディーを5:3の割合で持っていました。それぞれが4個ずつ食べると、キャンディーの比は7:4になりました。はじめに太郎くんは何個のキャンディーを持っていたでしょうか。
*答えはブログ末に
この問題を頭の中で考えて解くことは至難の業です。そもそも、ぱっとみた感じでは何を考えたらいいのかも分からないかもしれません。
でもこれは、頭が悪いわけでも、この問題が難問なわけでもありません。単に「紙の上に」思ったことを書いてみないと思考を始めることができないだけなのです。
実際に、思ったことをノートに書いてみると、思考が進み始めるのがわかると思います。
2.どうしてノートは必要なのか
なぜ、頭の中で思考することができないのでしょうか。実は、答えはシンプル。
脳は覚える気がゼロ
脳は難しいことを頭の中で考えることはできません。なぜなら、考えている途中で、思考したことが消えていってしまうからです。
この原因は脳の記憶力にあります。脳は、思考は得意ですが、記憶は大の苦手です。そのため、思考したことは端から消えていってしまいます。
実験をしてみましょう
・・・
どうですか。無理ですよね。
僕もやってみましたが、1段目の386×8の計算でさえ苦戦しました。3×8=24のあたりから、くり上がり、十の位、一の位がもうぼやけてしまって、いくつだったか分からなくなります。
こんな単純な計算でさえ、頭の中で行うとできなくなります。なぜなら、脳が計算して出てきた数字を片っ端から忘れていくからです。覚える気ゼロですよね。
紙の上が脳の記憶領域
脳は自分の記憶力のなさを、紙の上のメモで補っているのです。
記憶 = 紙の上でサポート
⇒その結果、難しいことや複雑なことを思考できる。
紙と鉛筆を使わないと、記憶の機能が大きく失われて「脳は思考停止する」しかなくなります。
このように考えると、紙の上は脳の記憶領域の一部と言えます。紙に書くことなく思考することはできません。
3.ノートがあれば思考はできる?
では、紙と鉛筆さえあれば、脳は困ることなくスムーズに思考ができるのでしょうか。
残念ながら、そういうわけにはいきません。もしそうならば、「思考力」なんて言葉は存在しないはずです。
大切なのはノートの使い方
思考がうまくいくかどうかは、「いかに脳の思考を邪魔しないもの、脳の思考を助けてくれるものをノートに書けるか」にかかっています。
- 分かりやすい絵、考えている因果関係が表せた図 など
⇒ 思考がスムーズに進む - 分かりにくい絵、整理が不十分なメモ など
⇒ 思考が邪魔されて行き詰るor間違える
このように見てみると、思考がうまくいくかどうかはノートの書き方次第だということです。
つまり、思考力は「ノートを書く力」と言っても良いかもしれません。いかにして思考した結果をノートに書き留めていくのか、それが肝心なのです。
4.経験を積むと頭の中でも思考できる
さきほどの筆算のような、単純な暗記を必要とすることは、いくら練習しても頭の中でできるようにはなりません。
けれども、思考の補助として考えていることを書いている場合、回数を重ねるごとに当然の思考となり、わざわざ紙に書かなくても頭の中で処理することができるようになります。
よくある誤解
↓
思考とは頭の中で行うものだと錯誤する。
そして、頭の中で思考できない自分は頭が悪いと思ってしまう。
でも、これは大きな誤りです。
紙の上で何度も試行錯誤をした結果、頭の中で思考できるようになっているだけなのです。
多くの子どもたちをよく見ていれば分かるのですが、紙の上での試行錯誤という過程を経ることなく、頭の中で思考できるといった天才はいません。(いたとしても100万人に1人といったレベルです。)
実際には
- 紙の上に書くという経験を積むことによって、書かなくても頭の中でイメージできるようになっている!
今回のブログをまとめると
- 思考にノートは欠かせない
- ノートは脳の記憶を補っている
- ノートの書き方が思考力につながる
- 経験を積むとノートなしで思考できる
【補足】ブログ中の問題の答え
問題:
はじめに太郎くんと花子さんはキャンディーを5:3の割合で持っていました。それぞれが4個ずつ食べると、キャンディーの比は7:4になりました。はじめに太郎くんは何個のキャンディーを持っていたでしょうか。
解説:
比と相性がよい線分図を描くと分かりやすいです。
同じ数のキャンディーを食べても、二人の個数の差は変わりません。
「太郎:花子:二人の差」を考え、差の部分を同じにすると
食べる前 5:3:2 = 15:9:6
食べた後 7:4:3 = 14:8:6
これより、比の1に相当するのが4個だと分かります。
太郎くんが食べる前に持っていた量は比の15に相当しているので
4×15 = 60個
が正解となります。