【共通テスト】「化学」の解説「第1問」(令和3年度)
令和3年の共通テスト「化学」、私も解いてみましたが難しかったですね。折角なので来年以降の受験生のために解説してみました。
【化学】共通テスト(令和3年度)を解いたみた
「共通テストを本気でやってみた」シリーズ第3弾。今回は「化学」です。結論から言うと、結果は96点でした。
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ちなみに、共通テストのテーマである「思考力を問う」というものに対しても吟味しました。
このページでの「思考問題」は次のような取り決めにしています。
「思考問題」とは
試験中に考える必要があると思われるものをここでは「思考問題」としています。
では、早速解説です。
第1問「問1」
これは簡単な問題だと思います。
アの「陽イオンの価数」は次のとおりです。
Al は Al3+ ⇒ 3価
K は K+ ⇒ 1価
Ba は Ba2+ ⇒ 2価
ポイントは原子番号1~20の中にないバリウムBaでしょう。BaはカルシウムCaと同じ2族で「アルカリ土類金属」に属しています。なので、同じ価数だと考えられます。また、たまに登場する硫酸バリウム BaSO4 でも Ba2+ だと判断できますね。
イの「水に可溶」かどうかは暗記事項です。
「水に溶けるかどうか」の暗記は、「水に不溶」を覚えるのが鉄則です。なぜなら、不溶の方が圧倒的に少ないからです。
硫酸塩で水に不溶なのは4つ
- CaSO4(白)、SrSO4(白)、BaSO4(白)、PbSO4(白)
*「アルカリ土類金属であるCa、Sr、Baの硫酸塩は水に不溶」と覚えます。それに Pb を追加です。
*Mg は2族ですが「アルカリ土類金属」には属していません。
*ちなみに硫酸鉛ⅡPbSO4 は鉛蓄電池でも登場していますよ。
この結果、MgSO4 は「水に可溶」となり、答えは①です。
第1問「問2」
結晶格子の問題。これはちょっと難しめかもです。
まずは「体心立方格子」について。
体心立方格子内の原子の数
- 立方体の「中心」と「頂点(8隅)」に金属原子があり、全部で原子は2コある。
*立体の中心に原子があるので「体心立方」なのです!
あとは計算ですが、この問題の計算手順は人によって異なるでしょう。
次の計算はあくまで私が分かりやすいかなと思う方法です。
アボガドロ定数 NA(/mol)を求める問題ですが、これは「1 mol 中にある原子の数を求める」ということです。それを念頭において解くことになります。
まずは与えられている文字から計算できるものをしていきます。
密度 d を用いると、体心立方格子の体積 L3(cm3)の質量は L3d(g)。この格子の中には原子が2コ入っているので、原子1コの質量は L3d/2(g)となります。
ここで、この原子は1 mol で M(g)なので、1 mol の中に入っている原子数 NA は
NA = M ÷ (L3d/2) = 2M/L3d
となり、答えは⑤。
ちなみに化学の計算問題で「密度」は頻出問題の一つです!絶対に練習をしておきましょう。
第1問「問3」
この類の問題は、3つともの正誤が合わないといけません。
まずはⅠです。ヘキサン C6H14 はアルカン類なので極性がなく、よって水には不溶です。なので「正」。
次にⅡですが、これは「思考問題」です。いわゆる問題集にはこのような問題はありません。けれども、普段から「本質を理解しよう」と心掛けていれば、次のような感じで「溶ける」ということをイメージしているでしょう。
これに基づくと、Ⅱは「正」だと考えられます。
最後に、Ⅲは、分子間力が強いほど、その分子間のつながりを切るのに必要なエネルギー(熱)が必要なので、「誤」となります。
以上より、答えは②。
第1問「問4a」
*C2H5OH の蒸気圧曲線の画像は割愛しています。
問4は、気体の状態方程式 PV = nRT と蒸気圧曲線の問題です。
圧力の表記
1.0 × 105 Pa
とパスカルで記載していますが、
1 気圧(もしくは 1 atm)
として考える方が断然すっきりして楽チンです。ここでも「気圧」で表記します。
では、まずは問4のaからです。
最初、容器が90℃で 1 気圧となっています。そして、「体積を90℃のままで5倍にした」ので、PV = nRT より圧力は反比例するので 0.2 気圧となります。
90℃、1 気圧 ⇒ 90℃、0.2 気圧
そして、「圧力を一定に保ったまま温度を下げたときに凝縮が始まった」という話になります。
*解くのに関係はしませんが、圧力一定で温度を下げると体積も下がります。
気体として存在していたエタノールC2H5OH が凝縮するということはエタノールの液体が生じるわけですが、気体もあるので気液共存の状態になります。
ここで気液共存の状態であるとき、次のルールを知っておかないといけません。
気液共存のとき
もし、飽和蒸気圧より高い圧力になっているなら、「飽和蒸気圧まで下がる」必要があります。そして、そうなるためには「気体になっている分子が凝縮して液体にならないといけない」のです。
⇒ 飽和蒸気圧まで下がる
⇒ 気体分子が凝縮する
このため、さきほどの状態から凝縮がおこるためには、飽和蒸気圧が 0.2 気圧にならないといけません。そう考えて与えられている C2H5OH の蒸気圧曲線を見ると、42℃で飽和蒸気圧 0.2 となっています。つまり、42℃から凝縮が始まるというわけです。
よって、答えは「42℃」です。
第1問「問4b」
続いて問4のbです。
これはちょいムズかもです。
「化学の重要問題集」にも似た問題があるので「思考問題」とは言えませんが、控えめに言ってもムズイですね。(たしか、重要問題集のB問題だった気がします)
解くためには2つのポイントを押さる必要があります。
- 1. P-Tグラフ内で気体の状態方程式は直線になる
- 2. 飽和蒸気圧より高い気圧にはなれない
「ポイント2」は先ほどの「問4a」で出てきた話と同じです。このため、
つまり、選択肢の③④⑤はアウトということです。(いずれも入ってはいけないエリアに入っている)
やや難しいのは、「ポイント1」です。
実は、直線FCGも直線DBEも「気体の状態方程式」を表す直線になっています。「直線になる」と言える理由は、式 PV = nRT で「P と T の関係」をみると、1次関数となっているからです。
どちらの直線が問題に適しているのかは、なにか値を代入すれば分かります。
問題文から V = 1.0 L、n = 0.024 mol で、適当に T = 300 K(27℃)を代入して P を求めてみます。(もちろんR = 8.3 × 103 です)
P = nRT / V
= (0.024 × 8.3×103 × 300) / 1.0
= 59760 Pa
= 0.59 気圧
となります。したがって、27℃で 0.59 気圧のところを通っていないといけないので、直線FCGが答えなのです。
以上より、経路は A → B → C → G となり、答えは①というわけです。
直線の式の求め方(志望校が旧帝大以上の方は必読です)
共通テストはマーク式なので上記の解き方でOKでした。ただし、志望校が旧帝大以上の人は、直線の式をきちんと求める必要があります。以下、おまけで説明しておきます。
P – T グラフで状態方程式 PV = nRT を考えると、縦軸が P で、横軸が T なので、「 P を y 、T を x 」と捉えて、式を変形します。
P = ( nR / V ) T
*数学の関数としたら、y = ( nR / V ) xというイメージ
一見、比例の式に見えるので原点を通っていないよと思うかもしれませんが、原因は ℃ と K の違いです。つまり、横軸は実際には T(K)ではなく t(℃)なので、それを補正します。
T = t + 273 を代入して
P = ( nR / V ) × ( t + 273 )
これが直線の式です。t = 0 ℃を代入すると、
P = 5.4 × 104 Pa = 0.54 気圧
となり、直線FCG の y 切片が求まっていることになります。
まとめ
以上、令和3年度の共通テスト「化学」の第1問の解説でした。
センター試験の過去問と比べると明らかに難しいですね!